本当は

みんな本当は知っているのだろう。

この世に生まれてきた意味などないこと。与えられた使命などないこと。

「生まれたから生きている」

それ以上でもそれ以下でもないということを。

 

法律、規則、義務、ルール、道徳、倫理。

たくさんたくさん作って縛った。もっと善くするために。

でも、思っていたものとは違っていた。

 

幼い頃、善の反対は悪だと思っていた。

でも、違った。本当は善も悪も無かった。

 

みんな本当は知っている、気がついている。

ただ忘れたふりをしているだけ。

 

「生きててよかった」

不可解な言葉だ。

死んでたこともないくせに。

 

よく「己に克つ」というけれど

私はこれほど「生きる」を表す言葉を知らない。

 

生きるためには、生き続けるためには、

己を捨ててはいけない。

己に飽きてはいけない。

 

「己に克つ」

 

生きるためには己に克ち続けなければならない。

己が己に飽きてしまわぬように。

己が己を捨ててしまわぬように。

 

本当は

他者の承認などなくとも、己の承認さえあれば十分なのだ。

けれど、これほど手に入れるのが難しいものはない。

 

だから

“しなけれらばならない”ことも、“すべき”ことも、存在しないこの世界で

全て幻想に過ぎないこの世界で

私たちは探すのだ。

 

誰も決して与えてはくれない、たった1つを。